06:最終電車(上り)



告られた。それもクラストップ級のいいコ。

「あんま嬉しそうじゃないね。」
「そう…デスカ?」
サイバーは、そうデスヨ?と溜息を吐いて見せた。リュータは口を
尖らせて、顎には皺が寄った。自分の香水の匂いが微かに移ったサ
イバーの部屋はしんと沈み、窓越しの雑踏以外に特に音もない。居
心地悪く、寝転がったまま、出しっぱなしに広げられた布の上に伸
び、それに鼻の辺りまで顔を埋めると、買ったばかりだったのか、
布屋独特な匂いがした。サイバーはもう一度小さく溜息を吐いた。
「何か不満なのか?そのコに…彼女についてさ。良いコそうじゃ
ん?」
彼の言うとおりだ。不満はない。はっきり言って皆無だ。何であん
なコが自分なんかに?と本気で首を傾げる程の、明るくて、かわい
くて…おおよそ完璧な女の子。細かいことはまだ知らないけど。リ
ュータは頬杖を付いて目を泳がせた。
「よく解んないんだけどさ、何か引っ掛かるんだ。」
「ゼータクもの!!」
自分の上にかかったサイバーの重さに、多少苦しくなりながらも、リュータは表情を崩さない。
ゼータクだなんて…まあ、その通りだけど、今までだって告られて、
つき合って、その中には、本当に完璧だとしか思えないようなコだ
っていたさ?でも、もう自分は7人中7人全員に捨てられ、今に至
っている。きっと怖いのだ。またそうなるのが。完璧でいようとす
ればするほど、愛がないと俯かれる。
重い口を開いた。
「相手から告られた場合って、終わりが見えてる気するじゃん?」
背中に感じていたサイバーの体が強ばった。
「ゼータクものぉぉ!!」
いきなり襟を捕まれて、左右に揺すられた。別に皮肉のつもりで言
ったわけではなかったが、そう取られたのだろう。なにしろ彼は初
恋一筋、彼女いない歴15,6年の晩稲だから。
やっと解放されてその体勢のままのびをすると、無造作に置かれた
腕時計が目に入った。
「あ、終電遅れる…」
リュータは体を捻って、自分の上に乗ったサイバーを振り落とし、
いそいそと荷物をまとめはじめた。
「で?つき合うの?断るの?」
ドアノブに手をかけたリュータに質問を投げたサイバーは、その年
頃の、女子、さながらに目を輝かせていた。
「お前ならどうする?」
サイバーは、つき合う。と、口の端を上げて即答した。
「かがめさんいるじゃん」
とたんにサイバーの表情が翳る。リュータはそれを見ないように視
線を出口に移した。その表情をされるのは堪らなく切なく、“かごめ”
についてはなるべく話に上げないようにしていたのに…迂闊だった。
「じゃ、オレ帰るから!」
ドアを勢いよく開ける。と、サイバーが、出ていこうと出した足を
止めさせた
「リュータ、他に好きな人いるのか?」
いるわけがない。
「いないならつき合ってみればいいじゃん?続くかもよ?」
ゆらゆらと上体を動かしながら喋っているのだろう。ゆらゆらと声
色が揺れていた。
「…終わりが見えてるってのと、実際終わってるのは全く違うもん
だぜ?」
笑っているような口調だったが、凛とした声だった
「知った風に…」
実際知っているのだろうな、とは思った。
じゃぁな。と、それに応じたサイバーとは顔を合わせずに部屋を出
た。



電車の窓から見えるはずの景色は、黒い鏡のように沈み、ぽつりぽ
つりと浮かぶ灯りも車内の灯りに消されている。未だ続く肌寒さに、
捲っていた袖をおろしながら、自分でできた影から外を見て、急に
切なくなった。それが何に対してなのかは、はっきりは解らなかっ
たが。
通り過ぎた車掌の起こした風で、髪が揺れ、サイバーの部屋の匂い
がした気がした。
不意に、胸が締め付けられる感じがした








微妙な感じです。
ここまでの進展に10話ぐらい使おうと思ってたのに…!!
ブレイクタイム…またもや書くことになろうとは…!!(弱!!







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