12:夏が来ます



かごめが行ってしまうらしい。
いつとは言わなかったけど、歌手になるんだってさ

思い出話か…。
「おれ、サイバー!宜しく!」
なんて、元気いっぱい求めた握手を、軽く無視されたことから話
してみようか。

あの日はちょうど今くらいの季節だったけど、もっと暖かかった
気がする。
かごめはお父さんの都合で転校してきたんだ。
席は、空いてたからって、おれの隣でさ。あぁ、何でおれの席の
隣が空いてたかなんだけど、…ほら、おれ、ちょっとしたイジメ
られっ子だったからさ、前日に席替えして空けておいてくれたん
だよ。先生が裏で仕組んで、お友達になれるようにって。

最初はね、やっていけないと思ったよ。実際。喋りかければ無視
されるし、自己紹介でも名前言っただけだわ、質問には答えない
わで…
でもさ、今こうして7年やってきてる。さっき、かごめはお父さ
んの都合って転校してきたって言ったけど、あれはホントはお父
さんが変わったからって理由なんだ。施設から引き取られたんだ
って。…あ、この辺誰かに話したら殺す。正義のミカタだけどお
前を抹殺する。いいか?

転校初日の放課後にな、偶然、パパさんが迎えに来るのを待って
るかごめに会ったんだよ。そんときに、色々話し込んで…それか
ら今に至る。
「7年か、辛かったろ…お疲れさま。」
リュータはおれの肩を叩いた。
「そんなことねぇよ。」

そう、疲れてはいない。自分はそうしたくてかごめの側にいて、
護ってきたのだから。テルオ先輩とか、その他、変なおじさん等、
諸々から。
ただ、辛くなかったと言えば嘘になる。好きだとぶちまけてしま
えばどんなに楽だろう、と何度思ったか解らない。でも自分は彼
女の恋愛事情を知っているわけで、その後、気まずい空気になっ
たら嫌だし。…第一、何で好きなのか、理由を問われたら多分答
えられない。明確な答えがないんだ。

思いっきり伸びをして、息を吐きながら、うつ伏せに寝ころんだ
リュータに背中から倒れ込む。

「バカだよな。おれ。もう終わってるのに7年も引きずって…」

かごめが行ってしまうらしい。
いつとは言わなかったけど、歌手になるんだってさ

あの日、透き通るような声で、かごめは夢を話した。
歌手になりたいと言った
パパさんのお嫁さんになりたいと言った。
それはとても綺麗な声だった。
おれは、ただ「かごめなら大丈夫ッ!」と返した。
おれも、泣いて嗄れた声で、いつかみんなを守れるようになりた
いと言った。
今のままじゃ無理ね。と言われた。でもサイバーなら大丈夫。と
も言われた。
その日から、泣いて無いなぁ…。あの時は、髪の毛をけなされて
は泣き、引っ張られては泣き、毟られては泣き…眼が怖いと言わ
れてはべそをかいていた。泣き虫で、背も小っちゃくて(今もだ
けど。)…気持だけだった。
おれ成長できたよな?かごめはおれが嫌いになったわけじゃない
って言ってくれたもんな?

リュータは何も言わなかった。
太陽が赤くなって窓から光が差し込む。アパートのくせに日当た
りのいい家だ。背中に感じるリュータの体温が温かい。切なくて、
限りなく寂しくて、だからずっとこうしていたかった。

かごめのいない夏が来るんだ。

書き上がったのに消えたss第2号です。イィサササ…切ねェ…
うぅ…何か不十分と言うか何か忘れてるような…??




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