14:みずいろ



「リュータ君、悪いけどサイバー借りてくわね。」
あぁ、とか、リュータの返事も曖昧なうちに、かごめはサイバー
の手を引いて校内に戻っていった。校内とは言っても、ここは屋
上なわけで、そこに突き出した部分に入っていったというそれだ
けだが。
半分を磨りガラスの窓にした銀色の引き戸。それが屋上への出口
で、ここにはあと、広めの踊り場と階段があるだけ。

かごめは、サイバーの手を取ると、そのサングラスの奥を見据え
た。それから静かに息を吸うと、
「時間がないから手短に話すわね。」
と話し始めた。
サイバーは身構え、息を呑んだ。
「サイバー、なるべく口挟まないで聴いてね。アナタには、アナタ
にだけはお別れを言っておこうと思ったの」
「お別れ?もう会えないのか?」
「えぇ。と言うよりはもう会いたくないの。」
「そんなッ」
サイバーの手から明らかな硬直が伝わった。
「冗談よ。バカね。というか、時間がないから口を挟まないで欲し
いの。」
本当に時間がないようで、かごめは口を尖らせた。そして、深呼
吸を一回、話し始めた。
「…サイバー…あのね…」
かごめがこんなに間を取りながら話すのは初めてで、相当大変な
事なんだろうと思った。
「サイバーが好きだったの。…全部…全部、何もかも合わせた中で
2番目、パパの次よ。」
かごめが微笑んだ。
嬉しいのと、照れるのと、寂しいのと、悲しいのが一気に来た。
かごめがこんな風に笑うのは初めて見たわけで、パパさんの前で
はこうなのだろうか?と思ってみたり。サイバーはこの時ほど複
雑な気持ちの複雑さを理解したことはなかったと思った。
「そっか…。…有り難う…」
そうして、彼は、笑顔を作ったつもりなのだろう。それしか言葉
がなかったのだろう。多分、三日間考えたってこれ以上の言葉は
なかったのだろう。
「有難うはこっちの台詞だわ。」
かごめは強くサイバーの手を握りしめた。
「じゃぁね。休みが重なったら遊びに来てね。じゃぁね。」
そして、もう一度「じゃぁね。」を言って手を離すと、振り返ること
なく、木霊する足音のリズムを崩すこともなく行ってしまった。

サイバーは、中退を以て彼女が自分を振りきろうとしたのだと思
った。彼女を護りたくて、ただその一心で生きて来た7年弱が、
終わった。


外で聞き耳を立てていたリュータは、聞かなければ良かったと激
しく後悔した。あまりに切なすぎて、サイバーにかける言葉が見
つからなくて。
多分彼は泣いている。磨りガラス越しに崩れ落ちる彼が見えたか
ら。こんな状況で、それは、決して確かとは言えない情報。でも
泣いている。
きっと泣いている。
声を殺して、華奢な体をより小さくして、肩を震わせて、醜い顔
をして…。
終わってると、頭で理解しながら、それでも好きで、心のどこか
に期待を抱き続けていたのだ。彼は。だからこそ辛い7年だった
に違いない。
いつか苦しげに吐いたように。

重たい銀の扉、厚さ5ミリの磨りガラスの窓、泣いているんだろ
う?彼は。…なんて役に立たない!
…役に立たない…!

微かに揺らいで見えるサイバーの髪に、リュータは苦虫を噛み潰
した。かける言葉が見つからなくて、扉を開ける勇気もなくて、
何もできなくて、途方もなく寂しくて、何もできなすぎて。

彼の髪は美しい、美しい蒼髪だった。
空と同じ色をしていた。
でもそれは悲しい、悲しい色だった。
それは涙と同じ形容を受けた青…。

水、色





さて、こんな感じです。本番はここからですよ!(遅!
で、おまけに続きます。
かごK設定とか…全部見た方がよくわかるとか優しくないサイトだなぁオイ
…つくづく。





本・漫画・DVD・アニメ・家電・ゲーム | さまざまな報酬パターン | 共有エディタOverleaf
業界NO1のライブチャット | ライブチャット「BBchatTV」  無料お試し期間中で今だけお得に!
35000人以上の女性とライブチャット[BBchatTV] | 最新ニュース | Web検索 | ドメイン | 無料HPスペース